生産者さんインタビュー:都留の特産野菜「水かけ菜」の栽培にかける思い(小林和代さん:前編)
2022年からの新しく始まった生産者インタビュー企画。
「道の駅つる」へお野菜や加工品を出荷してくださっている生産者さま方へ「都留文科大学」の学生さんたちと取材へ行き、その内容を記事にして紹介させていただくことになりました。
第二回目は、都留市の特産品である「水かけ菜」を作られている小林和代(こばやしかずよ)さんです。
小林和代さんのプロフィール
小林さんは現在、都留市内でお子さんご夫婦とお孫さん、家族3世代で暮らしていらっしゃいます。
明るく朗らかな笑顔と、「水かけ菜」に対する真摯な思いをお持ちで、取材当日は冷たい風が吹く中でも臆することなく、水かけ菜の畑を誇らしげに案内してくださいました。
水かけ菜作りは旦那さんも携わってくれていて、年間を通して、お米や野菜を作りを行い、冬は道の駅つるに水かけ菜を出荷していらっしゃいます。
小林さんのご経歴をインタビュー形式でお尋ねしました。道の駅つるに出荷いただいているお野菜と、水かけ菜を作る過程でお持ちの思いについてもご紹介いたします。
目次
水かけ菜とは?
聞きなじみのない「水かけ菜」ですが、その名の通り、水を引き入れた畑の中で育つ野菜です。
小林さんによれば、畑の中の水は絶えず「十日市場・夏狩湧水群の湧水」の引き入れと排水によって循環するようになっていて、温度が一定に保たれているそうです。湧水は年間を通して一定の水温で凍ることなく、冬の冷えた空気よりも温かい、澄んだ水環境を作ってくれるため、水かけ菜が大きく、よく育ちます。
※水の中に野菜が育っている光景はなかなか見なれず、何度見ても新鮮で面白かったです。
都留市では下の写真のように、特産品である水かけ菜の畑にのぼりを揚げて応援しています。
※取材日は風も強く凍てつくような寒さでしたが、本当に都留の湧水は凍っていませんでした。
水かけ菜について詳しくはこちら>>
小林さんが水かけ菜を育て始めたきっかけ
−いつから水かけ菜を作っているのですか?
「うちの家系では50年ぐらい前に(一代上の)お父さんが始めたんだよね。お米が作れない時季に田んぼを使って作れる野菜がないかな、ということで、周りの地域や御殿場なんかで富士の湧水を活かして作られている水かけ菜に挑戦してみようと思ったんだね。」 |
「昔は、この辺り一帯で獲れた水かけ菜は富士吉田の市場に出されていたんだ。そこから八百屋やお店に水かけ菜が出回ったことで、この辺ではお正月のお雑煮に入れたり、日常的に食べる食文化が定着していったんだよ。」 |
どのように水かけ菜を育てるのか
−水かけ菜はどのように育てるのですか?
「お米作りが終わったあとの田んぼで種を蒔くんだよ。冬は田んぼを使わないから、時期のズレを有効活用するんだ。それから発芽したら水を引く。湧水は水道水と違って水が一定の温度に保たれるし、かけ流しにして循環させることで、冬でも育てることができるんだよね。春になると蕾ができて、そこから種をとっておいて、という繰り返しだよ。」 |
−湧水のかけ流しで育てる野菜があることを初めて知りました。他にも同じような方法で育つ野菜はあるのですか?
「他には水ねぎ、冬菜もかけ流しで育てられるよ。水ねぎはこの辺りでは有名だよ。甘みと香りと粘りが強くて。冬菜はうちのおじいちゃんがかけ流しでもできるんじゃないかって始めてみたんだよ。」 |
水かけ菜づくりで大変なこと
−水かけ菜を育てるにあたって大変なことはなんですか?
「はじめの頃はよく鹿が出て、新芽を食べられちゃったね。」 |
「それと、最近は温暖化でしょう。昔は10月10日に種を蒔くって決まってたんだけど、最近は年によって暑かったり寒かかったりで全然読めない。あまりに遅く蒔くと寒くて芽が出てこない。今年もね、秋頃まで比較的暖かかったから少し遅く蒔いたら、周りの(農家さんのものは)はすごく大きく育ったけど、うちのは小ぶりになっちゃってね。種を蒔く日が1日違うだけで全然変わってきちゃう。そこが難しいよね。」 |
今年は小ぶりになってしまったという水かけ菜。同じ育て方をしても毎年同じようには育たないから難しいのですね。
小林さんのお話から、都留市で水かけ菜が作られる理由と歴史、ご自身が水かけ菜を作る中で感じていらっしゃる大変さや面白さを知ることができました。水かけ菜をこれまでより一層、身近で、都留市にとって特別な野菜なのだと感じられるお話でした。
今回のインタビューも「水かけ菜を知る人が増えればいいな」と引き受けて下さった小林さん。後編では、水かけ菜の魅力を伝えるべく、小林さんおすすめの食べ方をご紹介します。
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